池袋に通っていると、しょっちゅう見かける“ある看板”。
10分歩いただけで、「タイ古式マッサージ」をこんなに発見。
「タイ古式」という世の中的にはマイナーなマッサージ店がこんなにあるとは、これ如何に。
そもそも、タイ古式マッサージって、なに? 気持ち良いの?
と、いうことで、今日はタイ古式マッサージ店に行ってきました。
今回、僕が訪れたのは、某大学から歩いて2分程度のところにある、「ギンナリー」というお店。店前の看板によると、「春のキャンペーン!! 20%OFF!!」。羽振りいいじゃないですか(今の季節は紛れもなく秋ですが)。
さらにホームページでは「『世界一気持ちいいタイ古式マッサージ店』を目指してます!」とのこと。期待できますね。
ギンナリーが入る雑居ビルの3階に到着すると、「イラシャイマセー」とお姉さん(いや、おばさん?)がご挨拶。「初めてですけど、いいですか?」と問うと、笑顔で「ドウゾー」。
「40分コースでお願いします」と告げ、料金の3100円を払う。その後、施術室へ案内され、据え置きのパジャマに着替えるよう指示される。もちろん、お姉さんはしばし退出。
施術室は、タテ3メートル、ヨコ1.5メートルといったところ
着替え終わってお姉さんを呼ぶと、なぜか足洗がスタート。大きめの洗面器のなかで、足をモミモミしてくれる。うん。なかなか気持ち良い。
「タイの方ですか?」
「ハイ」
「日本来てどれくらいなんですか?」
「ゴネンデスネー」
日本語もお上手である。
2分ほどの足洗が終了すると、お姉さんは「ウツブセデマッテテクダサイ」。再び独り身になる。
すぐに施術再開なのかと思いきや、3分たっても戻ってこない。部屋の外からタイ語と思われる言葉・笑い声が聞こえる。お姉さんは同僚と談笑をしている模様。おいおい。
4分程度でカムバック。ようやく本格的なマッサージが始まった。
「ドーデスカー、イタイデスカー」
「あー、大丈夫っす」
親指で背中を圧される。まぁまぁ痛いが、マッサージなんてこんなもんだろう。耐えるしかない。
「はは、はは」
脇腹、そしてワキをモミモミされ、無意識的に、笑いが……。ヤ、ヤバイ。こらえなければ大爆笑の沼にはまってしまう。知ってるでしょ、お姉さん? オレはワキが弱いんだよ。小学生のころ、クラスメイトに刺激されて、いつも笑ってた。
「カラダ、リラックスシテクダサイネー」
うっせーよ。オレは笑いをこらえてるんだよ。うわー。くすぐってー。
この攻防が3回ほど続き、今度は首のマッサージ開始。お姉さんは僕の背中に馬乗りなって、力いっぱい首裏の指圧。うわー。コレはマジで痛い。なんかゴリゴリいってるぞ。
「イタイデスカー」
「い、痛いです」
「ハハハ。ダイジョブデスカー」
ハハハじゃねえよ。痛いよ。乗っかられてるから、首に加えて背中もしんどい。これが(たぶん)5分続いた。
「オワリデース」
やっと終わった。帰れる……。
「アオムケニナッテクダサーイ」
え? まだ続くの? なんてことは言えず、指示に従い、身体を反転。休む暇なく、マッサージが再開。足をモミモミ、スネ裏をポンポン、太ももをギュウギュウ。どんどん、お姉さんの手が上半身に迫ってくる。
このままだと、股間だ。いや、さすがにソコはマッサージしないだろう。
お姉さん、僕の太ももに乗っかり、両手を股関節に。
そして、手のひらでその部分をスリスリ。ときたま、ブツにお姉さんの手が当たる(もちろん、パジャマ&下着越しだが)。アッ、アッ……。
僕、目を閉じて視覚的刺激を遮る。何か別のことを考える。ここでブツがアアなったら、最高に格好悪い。お姉さんも困るだろう。さあ、集中。精神統一だ。
「チカラヌイテクダサイネー。チカラヌカナイト、マッサージノイミアリマセンヨー」
この言葉を受けてもなお、僕は必死に集中し続け、難局を乗り切った(当たり前のことを書いておくけれど、ブツに対する直接的な刺激は一切ありませんでした)。
股間付近のマッサージが終わり、施術も終盤。あぐらをかいた状態で、背中を思いっきり押される。ああ。脚の筋と背中に最高級の苦痛が。そういえば、これとまったく同じことを、中学校の体育の時間の準備体操でやった気がする。
「オワリデース。キガエテクダサーイ」
出て行くお姉さん。ああ。やっと終わった。痛くて、くすぐったくて、ドキドキして、そして痛くて……。色々あった40分間だった。気持ち良かった足のモミモミが遠い昔のようだ。
最後に待合室で出されたお茶を飲んで、退店。お姉さんが来て、「アリガトーゴザイマシター」。
待合室
あっ、そうだ。タイ古式マッサージ店がたくさんある理由を訊かなきゃ。
「タイジン、ニホンゴカケナイ、ワカラナイ。マッサージナラ、デキマス」
な るほど。日本で稼ぐ手段として、マッサージは手軽なわけね。言葉も「イタイデスカー」「ドーデスカー」くらいを話せればいいし、高度な読み書きも不要。料 理人ほど高レベルな技能も必要なく、客の身体をギュウギュウ、ゴリゴリすればいいだけ。ゆえに、たくさんのタイ人女性がマッサーとして極東にやってきてい るわけだ。
でも、裏に悪徳ブローカーとかいそうな気がするなあ。借金して日本に来てる可能性とかも全然ある。まぁ、そこまで深いことは訊かなかったけどね。
店の外に出てみると、マッサージを受けた身体が……めちゃくちゃ硬くて、重い。肩が張っている。
そう。僕は施術の間、常に痛みに耐え、笑いをこらえ、そして精神統一を続けていたため、身体に疲れがたまってしまったのだ。3100円と40分を捧げた結果、手にしたものは、心地悪い疲労感のみ。虚しすぎる。
もう、タイ古式マッサージには行きません。