やっちゃいけないフィールドワーク

ホームレス、リストカット、風俗、自慰行為などなど――。気になってはいるけど、 なかなか人には聞けないモヤモヤ…… そんな世の中の「?」を2人の大学生が解き明かす!?

【インタビュー】中学受験の「その先」に何があるのか

ASUKAです。

ビジネスパーソン向けの雑誌は、
時々、このような特集を組んでいます。

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公立中学校出身の僕からすると、
自分の人生の歩みを否定されているような気がしないでもなく、
あまり気分のいいモノではありません。
それに加え、この手の雑誌は、完全なオトナ目線。
受験をする当人であるキッズたちの想いなんて完全無視です。
ホント、燃やしてしまいたいですわ。

 
一方で、世の中に「中高一貫神話」があるのも確固たる事実。
だからこそ、お受験を扱った雑誌が山のように出版されるのでしょう。

しかし、中高一貫校を受験し、そこに通ったその先には、何があるのでしょうか。
果たして、バラ色の人生は待っているのでしょうか。
お受験をして中高一貫校に通った方々へのインタビューを行い、
「その先」に何があったのかを探っていきたいと思います。

今回のインタビュイー
Sさん(仮名)
性別:男性
年齢:23歳(1992年生まれ)
出身地:東京都練馬区
現在の職業:サラリーマン
出身中高の偏差値:60
出身大学・学部:立教大学 コミュニティ福祉学部

親の強制でお受験をすることに

ASUKA(以下、A):中学受験をすることになったきかっけは?

Sさん:小4の時に、親の意向で塾に行き始めました。
周りの親仲間が子供に中学受験させる様子を見て、俺の親も刺激を受けたらしいです。
ただ、俺は受験に乗り気じゃなかったから、5年生までは全然成績が伸びませんでした。

親に勧められ塾へ通い始めたものの、
当初は受験へのやる気がなかったSさん。
しかし、意外な形でモチベーションが芽生えます。

S:6年生になったタイミングで、親がいきなり
「このままじゃ日本の中学には受からないから、海外に留学させる」って言い出したんです。
成績が上がらない息子を見て、親も親なりに色々考えていたとは思うんですけど、
そのとき、僕は自分が親に見限られた気がたんです。
それから、「海外なんていかない! 絶対日本の中学に行くんだ!」って思うようになって、
しっかり勉強もするようになりましたね。

A:受験への動機は、親への反抗心だけ?

S:はい。
大学進学のことも、就職のことも、全く考えていませんでした。
私立中学に合格して、親を見返すことが唯一の目的でした

親に勧められて中学受験準備を始める
→親に強制された他受験のため、やる気が出ない
→やる気が出ない息子を心配し、親がBプラン(=留学)を提示する
→親を見返すために受験に真面目に取り組むようになる
という、一度聞いただけでは、「えっ?」と首をかしげてしまうようなストーリー。
とにかく、Sさんの場合は、親御さんが中学受験に大きな影響を及ぼしたようです。

奇跡の合格と、その後の中高生活

A:受験の結果はどうだった?

S:結果的に志望校以上のところに行けました。
模試の成績も全然伸びなくて、
合格した学校の合格判定は直前まで10%だったんです。
ほんと、奇跡だったと思ってますよ。

A:受験によって目標は達成できた?

S:はい。
両親も自分のことを認めてくれたなと思います。

Sさんの中学受験は、成功という形で幕を閉じました。
しかし、中高生活そのものに対し、
Sさんは「可もなく不可もなかった」と振り返っています。

A:頑張って入った中高での日々はどうだった?

S:「楽しかったと言えば楽しかったなー」ってレベルですね。
志望校に入れたから、満足のいく中高生活を送れたってわけではないと思います。

一浪をして大学進学

A:中高受験の大きなメリットは、
レベルの高い大学に進学しやすいことだと思うんだけど、
その利点は感じた?

S:そういうメリットは間違いなくあったけど、
僕の場合、それを活かすことができませんでした。
それなりの進学校だったので、
早慶レベルの大学への指定校推薦枠が結構あったんですが、
僕はそれをゲットできなかったんです。

結局、Sさんは1年間の浪人をして立教大学に進学することになりました。
出身中高が高レベルの私立であることを考えると、
悪くはない一方、大成功とも言い難い結果を、
Sさんはどう受け止めているのでしょう。

A:ごく普通の公立高校から
立教であったり、もっと高レベルの大学に進学する人もいることを考えると、
Sさんの結果は「投資に見合っていない」とも言える。
それについて思うところとかはある?

S:そこに関しては、完全に自分の力不足っていう思いだけですね。
親には申し訳ない気持ちはあるけれど、今さらそれを考えても仕方ないです。

A:自分のこれまでの人生や経歴を踏まえて、
就職活動の結果には満足している?

S:割と満足してるけど、もうちょっと有名なところに行きたかった気持ちもある。
大学がどうとかっていうことではないけど、
自分としてはもっと行けると思ってた。

A:親の期待に応えられたと思う?


S:親の期待自体、中学入学以降はなかった。
大学も就職先も「どこでもいい」というノリだった。
期待が終息していったのかも。
自分が色々決めてきたから、親も「こいつは親の言うこと訊かないんだな」って思ったんだと思う。
だから「好きにしな」って感じ。
それは良かったのかなと思う。
自分への変なプレッシャーもかけなかった。

「その先」に何があったか?

・10代の充実した中高生活
・満足できる高校卒業以降の進路

世の多くの大人が中学受験に抱く上記2つの利点ですが、
Sさんは、受験を通してそれらを得ることはなかったと捉えています。

一方、Sさんが得たものは、「親からの自立」でした。
もちろん、中学受験終了後、100%の自立を果たしたわけではありませんが、
受験を巡る親とのコミュニケーションを通し、
「自分は自分で物事を決める」という考え方を手にしたことは間違いないようです。