代々木公園に面白いカフェがある。
野宿者が運営している、「路上カフェ」だ。
ここまでオープンテラスを忠実に再現している店もないだろう。
なんといっても、貨幣経済を超越したそのカフェで行われるのは物々交換。
つまり、コーヒー一杯飲むためには、
貨幣以外の何かしらを交換する必要がある。
場所は代々木公園のテント村。
年末から、
「野宿者 0.1%のシアワセ」
というテーマでフィールドワークを行ってきた
やっちゃいけないフィールドのASUKAと潤pの2人。
年越しの炊き出しで出会い、
前回記事でも触れたEさんは、
実はこのカフェの店主でもある。
カフェは自身のテントの前で開かれている。
つまり、今回はカフェでありながら、
Eさんのお宅にお邪魔してきたような形だ。
Eさん:代々木公園のテント村で土日だけやってます。1月2月は寒いんで、日曜だけですが。
日曜日の昼下がり、
代々木公園に集合したASUKAと潤pは、
まずテント村を探すところからスタート。
もちろん手がかりはない。
ASUKA:潤pさんは何持ってきたんですか?
潤p:マフラーと、ホカロンと、腹巻と、、、生活必需品系?ASUKAさんは?
ASUKA:僕はねー、ズボンとTシャツ持ってきましたよ。
テント村見つからず、
とりあえず代々木公園外周を一周。
ASUKA:まったくどこにあるかわからないですね笑
潤p:あ、あれじゃん?
小道を発見。
入ってみると、予想通りのテント村が。
ブルーシートで作られた家々が並び、
ここだけ時を止めたような独特の雰囲気が漂います。
*写真はイメージです。
カフェはすぐに見つかった。
すでに複数人の人が集まって、
午後のティータイムを楽しんでいる。
ホームレスと呼ばれる人達と関わることに慣れてきたASUKAと潤pは、
何の気なしにその円卓の輪に入り込めている。
それだけでだいぶ昔とは意識の変化した2人。
持ってきた物々交換アイテムをそれぞれ渡し、
15種近い飲み物が書かれたメニューから、
ASUKAは紅茶を、
潤pはギリシャハーブティーを注文。
なんともおしゃれな品揃え。
円卓に集っているのは、
Eさんとやちゃいけメンバー2人以外に、
同じくテント村に住む方が2人、
研究者1人、
社会人1人という具合。
だいたいいつも賑わっているという。
円卓に布を引き、下には炭を焼き、
簡易コタツがこのカフェだ。
出てきたら飲み物は、
予想以上に上品なものだった。
どこから持ってきた水かはわからないが、
味は確か。
炭でアルミホイル焼きをしていたじゃがいもも頂き、
塩をふって食べる。
午後の光が差し込んで、
時を止めたその場所は現代社会の喧騒を忘れさせる。
Eさん:就活はどうするんですか?
ASUKA:もう僕は決まりましたねぇ。
Eさん:卒論も書いたりしてるの?
ASUKA:はい。もう提出は終わりました。
Eさんとは何者なのか、
このカフェは一体なんなのか、
なんでこんな活動しているのか
ツッコミどころはいくらでもある。
しかし会話する内容は、
いたって普通の、日常会話。
不思議と質問する気もおきず、
ただその雰囲気に身を委ねた。
大晦日の炊き出しから始まり、
路上生活者の家にまで来てしまった。
今まで別世界として厳しく線引きしていた世界が
自分の世界に溶け込んでくることに、
特に違和感は感じなかった。
路上生活者と言われる人達のコミュニティは、
誰でも受け入れてくれる。
誰でも溶けこめる。
名前を名乗ることもなく、
お互いの何も知らないが、
それでいいという、
「緩い」関係性がある。
その緩く穏やかな繋がりは、
現代社会にあるような、
個性化を強いたり、
競争に投げ込まれたり、
末期資本主義的な煽られ続ける社会のそれとは大きく違う。
一通りお茶を楽しみ、
カフェを去る時、
「また」
という言葉はない。
また気が向いた時に、来ればいい。
そんな不思議な懐の広さを持つEさんと社会が、
代々木公園の片隅にひっそり今日もあり続ける。